
あびばのんのんから間もなく、新曲を出したテンパレイ。
そなちねを聴いた時の衝撃は忘れられず、
あびのばんばんを出したときは、あまりに良すぎたので
これが最高傑作だろうなと思っていた矢先。
「GHOST WORLD」が発表されたのです。
「この曲、とんでもない」と思ったのは
「人はなぜ生きるか」について
一途に過不足ない詩とリズムを刻んでいたから。
とはいえ、一見難解に見える歌詞であることは確かで
それゆえこの曲を理解でいない方もおおいでしょう。
もったいない。
「この曲の素晴らしさをもっとたくさんの方に伝えたい」
そう思ったので、解説していきます。
「GHOST WORLD」とは?
ゴーストワールドというタイトルですが、
これは、文字通り
ゴースト(存在しない・無価値な・虚無な)
ワールド(世界・世界観・信念)
=「この世界は全部幻なんだけどな」
そういった意味合いが込められています。
歌詞のなかにも「くだらない」「飽きたように業をなす」とあり
MV では、親(?)と子(?)が、それぞれ別の世界を生きている。
私たちの世界も同じで、
単に遺伝子の器であり、予め決められた使命に則って
(そうとも知らず)淡々と生きる私たちは間違いなく
「くだらない」「業をな」している。
そして、互いが互いのフィルターを通して
別の世界を生きています。
共通した普通の「世界」など、
幻(=ゴーストワールド)にすぎないのです。
詳細な解説
この曲のMVでは、母は終始ゲームの世界を生きています。
母にとって「ゲームの世界」こそが「世界」だと信じきっており、
それがゴースト(=虚構)であることを忘れるかのごとく、
ゲームに夢中になる。
Nice Motherをカルマに、
血なまこになって
息子のために奮闘しています。
しかし、ゲームの世界がゴーストワールドであることに
全く気づかないわけではなく
時折現実に戻り、虚無感を思い出しては
「ハッとした顔」を見せます。
それに対し、息子は「母中心の世界」こそが「世界」と設定されています。
そのように脳がプログラミングされているようです。
「Nice Mother」を目指す母のように
「Perfect Son」をカルマに、
母のために懸命にお世話し、
母のために理想を演じ、
母のために、最終的には人をもあやめる。
お互いが「これ違うよな…」「このカルマおかしいよな…」と時折感じながら、
無価値観、虚無感から目を背けるように
一心不乱にそれぞれの「世界(=ゴーストワールド)」を生き続けます。
そして、母が息子のためを思えば思うほど
(母がゲームの息子を育てるシーン)
息子が母のためを思えば思うほど
(息子が母に液体を渡すシーン)
お互いは狂っていきます。
たまらない日が続いたとしても僕ら
一切の業を成すのくだらない いつだってもう飽きたように僕ら
一切の業を成すの
※ちなみに、カルマとは業のことです。
ただ、とある宗教の「人間自体=業」の考えから
「人間の為すこと」「目標」など全般の意味も指します。
空虚な世界
この曲は、この世界そのものを表しています。
実際、私たちも虚構の世界を生きているからです。
「早起きしなさい」「売り上げを伸ばしなさい」「挨拶をきちんとしなさい」
たまたま「生き残りたい」遺伝子が繋いだ命である私たち。
人間の作るくだらないルール全て、
虚構であり「くだらない」ことなのです。
僕らの時代がそうさせた夜もある
痛んで遠く遠く浮かんだ
死の間際に、息子がほほ笑むシーンがあります。
・ああ、もうこれでくだらない世界を生きなくていいんだ
・どうせこうなるなら、もっと自分を大切にしておけばよかったな
・でもカルマ達成によって喜んでくれる人がいたならそれも幸せか
解釈はそれぞれであり、
そのそれぞれの解釈こそがゴースト・ワールドです。
MVに登場した母と息子がそれぞれの世界・カルマを生きているように
私たちもそれぞれの世界・カルマを生きています。
それはとても空虚でやるせないことですが
空虚な世界だからこそ、どの世界を選ぶかは自分次第。
その希望も、忘れるべからずなのです。